風景をつくる建物12

P1000678.jpg
成り行きから、ここ西賀茂の正伝寺までやって来ることになりました。30数年前に来ているはずなのにほとんど憶えていません。たぶん当時は建築にのみ興味があって、仏像や庭園にはあまり関心がなかったからでしょう。正伝寺は円通寺と並んで借景式庭園で有名な寺院です。実は、前回“現実の世界でも見受けられる”と書いたもののひとつが「借景」です。「借景」にもいくつかのタイプがありますが、ここ正伝寺の借景庭園では、「枯山水」と遠景の比叡山との間に大きな「空」(間と言ってもいいと思います)が存在します。そして、何枚も写真を撮っているうちに、いくつか気付いたことがあります。それは、
1、主題は必ずしも比叡山とは言えない。(比叡山が大きく写るような写真の撮り方をすると、何かしら焦点のはっきりしない普通の風景写真になってしまうのです)
2、近景の庭園が強い秩序を持たないと、比叡山の存在まで薄れてくる。
すなわち、借景庭園というのは、借景の部分、ここでは比叡山ですが、その比叡山を主題にした庭園であるというよりも、「枯山水」と「比叡山」の「取り合わせ」が主題であって、それを成り立たせるために、その間に大きな空白(間)を必要としているんだということです。
P1000680.jpg
この写真の比叡山が借景と成り得ないのは、近景があいまいだからです。近景が形式を獲得したとき比叡山は借景へと変化します。このことについてはいずれ書こうと思っていますが、建築は機能や表現ではなく形式そのものなのです。

芋の露連山影を正(ただし)うす     飯田蛇笏
この句も
芋の露/連山影を正うす
と間を置いて「取り合わせ」の句として読めば正伝寺の庭と同じような光景が眼前に現れます。
コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

| TOP |