中書島には、昭和39年まで遊郭がありました。その名残が今でも、もうほんのわずかになりましたが、見られます。遊里であるからには当然そこは、非日常的で幻想的、頽廃的な世界であったはずです。

なぜ2階窓手摺が社寺の高欄を模したデザインなのかわからないが、もしこれが鮮やかな朱に塗られていたとすると、たしかに竜宮城のような幻想的な雰囲気を醸し出したかも知れない。建築全体は意外と禁欲的な構造です。

肘木の先端には普通の町家には見られないようなくりかたが施されている。大工としてはこの程度の装飾しか思い浮かばなかったのかも知れない。

とにかく普通の建物と大きく違うのは、このような限りなく細密な細工が施された断片があちこちにちりばめられていることです。幻想的な世界は、細部の力を借りることではじめて出現できたのです。
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